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2006年10月03日

◆島根県八束郡・佐太神社の御座替神事(八)

◆島根県八束郡・佐太神社の御座替神事(八)


◆島根県八束郡・佐太神社の御座替神事(八)

◆◇◆島根県八束郡・佐太神社、お忌み祭(神在祭)(3)

 佐太神社(※注1)では、十一月二十日(神迎え)、南北の出入り口のみを残して、本殿付近は注連縄が張り巡らされる。夜、宮司以下はこの南口より注連縄内に入り、各本殿の前で拝礼を行う(佐太独特の礼拝方法である「四方拝」を行う)。その後、直会殿の秘儀で神々を迎え、神籬(ひもろぎ)は中殿前に安置される。その後、二つの入口は青木で閉ざされ、これ以後、神職といえども注連縄内には入ることができない。

 十一月二十五日(からさで=神等去出)(※注2)、白装束姿の神職は神籬(ひもろぎ)を奉持して、オーという警謐(けいひつ)の声が暗い山々にこだまする中を、神名火山に続く尾根の途中にある神目山に登り、秘祭を行う(※注3)。ここには日本海に通じるとされる池と呼ばれる小さな窪みがあり、ここに神籬(ひもろぎ)を載せた船を置くことで、神々は佐太神社を去っていくとされている。

 十一月三十日(止神送り=しわがみおくり)は、二十五日の神送りと同様な行事が行われる。これは帰り残った神を送る祭礼だ(佐太神社の神在祭は他社と異なり春と秋の二回行われる)。

※参考Hints&Notes(注釈)☆彡:*::*~☆~*:.,。・°・:*:★,。・°☆・。・゜★・。・。☆.・:*:★,。・°☆

(※注1)佐太神社のお忌み祭では、神々を二十日に神迎えして、境内に忌串を廻らして人々を近づけないようにする。二十五日の神送りの夜には、亥の刻(午後十時)に斎主は神籬を捧げ、大勢の人々がこれに従い、神目山(もと神名火山)の上まで神送りする。

 神在月になると、佐陀の浦(鹿島町古浦海岸)には竜蛇が出現し、これが佐太神社に奉納されるようになった。竜蛇とは南方産のセグロウミヘビで、お忌み祭(神在祭)の頃の季節風(お忌み荒れ=晩秋、日本海に北西の風が強くなる頃、出雲の海は急に暗くなり海面は荒れて泡立つ)によって浜に打ち上げられたものだ。

 この竜蛇信仰は、海の彼方から寄り来るという古代信仰(マレビト信仰、海の果ての常世国から豊饒をもたらす神、対馬海流がもたらす南方文化への憧れと信仰)を伝えるものである。

(※注2)神在祭(お忌み祭)の最後の神事で神々を送る「神等去出(からさで)さん」の日は、特に厳重に身を慎む。迎えた神々は鹿島町の佐太神社、松江市の神魂(かもす)神社などこの地方の七社にも廻ったあと、お立ちになるが、佐太神社では「水夫(かこ)」と唱えつつ神目山(かんのめやま)頂上から送る。

 斐川町の万九千(まんくせん)神社では、十一月二十六日の夕方、梅の小枝で神社の戸を叩きつつ見送るが、かつては出雲の神名火山(現在の仏経山)で焚く火の中をお立ちになったという。このように海(あま)から迎え、山=天(あま)から送り返すところに、ものごとを循環してとらえる日本人の深層意識が読み取れる(お盆にも同じような習俗が残されている)。こうして人々は身を慎み、清らかな心で神々に接した後、もの忌みから解放され、晴れ晴れとした活力を感じるようになるのだ。

 出雲の信仰は、縄文時代の精霊信仰を継承しつつ、弥生時代の祖霊信仰を受け入れ(このときの信仰が日本人の神信仰の基本型を形作っているようだ)、今日まで生き続けて来たことになる(北九州の勢力が縄文文化との縁を断ち切ったうえで、大陸・朝鮮半島の新しい文化を取り入れたのに対して、出雲の人々は縄文文化を継承しつつ、新しい高度な文化を取り入れた人々のようだ)。

 このように、出雲から日本人の信仰の基層を見て取ることが出来そうである。小泉八雲は言う。出雲は日本の「民族の揺籃(ゆりかご)」であると。「出雲はわけても神々の国である」と。

(※注3)秘祭は二段あり、前段は頂上からはるかに見える日本海に神々を送る神事で、後段は五穀豊穣と子孫繁栄を祈願する祭りの原型らしいのだが、弥生の祭りの名残とする説もある。それと、銅鐸と銅剣が出土した志谷奥遺跡はこの山の麓である。あの青銅器はこの祭りと関係があるのかもしれない。


スサノヲ(スサノオ)


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Posted by スサノヲ(スサノオ)  at 00:15 │Comments(0)スサノヲ(スサノオ)の日本学

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